フィールドテストで分かったUQ WiMAXの弱点
2009年2月26日、UQコミュニケーションズによるモバイルWiMAXサービス「UQ WiMAX」の試験サービスがスタートした。試験サービス期間だが、UQ WiMAXの実力をフィールドテストした。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20090331/1025154/
既存サービスとの違いは“速さ”
モバイルWiMAXとは、IEEE802.16をもとに規格化された高速無線通信のことだ。UQ WiMAXの通信速度は下り(サーバー側からパソコン側へ送る)最大40Mbps、上り(パソコン側からサーバー側へ送る)最大10Mbps。2月26日の発表会で筆者が見たデモンストレーションでは下りが15~20Mbpsほど出ていた。
無線通信サービスは、イー・モバイルやNTTドコモ(FOMAハイスピード)などがHSDPA規格のサービスを提供している。通信速度は、イー・モバイルが下り最大7.2Mbps/上り最大1.4Mbps、NTTドコモが下り最大7.2Mbps/上り最大384kbps。UQ WiMAXはこうした既存のサービスと比較して通信速度が高速なのが特徴だ。
料金もリーズナブルで、現在提供されている完全定額プラン「UQ Flat」は登録料2835円、基本使用料が月額4480円。6月末までの試験サービス期間中は無料で利用できる(通信に必要なデータ端末は購入する必要がある)。本サービスは7月1日から開始する予定だ。
サービスエリアは現在、東京23区と神奈川の横浜市/川崎市。今年夏には首都圏・中部関西(名古屋/大阪/京都/神戸)、今年末には政令指定都市と全国主要都市をカバーする。2012年度末までに人口カバー率90%以上を予定している。
駅や空港、新幹線内で利用できる公衆無線LANサービス「UQ WiFi」も開始する。UQ WiMAXと併用すればネット接続できるエリアが広がる。UQ WiMAXを利用した接続サービス(MVNOサービス)をプロバイダーのニフティやNECビッグローブが提供することも決まっている。
UQ WiMAXの有料サービスが始まる7月には、パソコンメーカー各社から、WiMAX接続機能を搭載したノートPCが登場する予定だ。WiMAXの普及に向けて各方面で着実に準備が進んでいる。
インテルは、既存の無線LAN(WiFi)チップセットにWiMAX接続機能を追加したWiMAX&WiFi対応チップセットを提供する(画像クリックで拡大)
対応チップセットを搭載したパソコンの展示機。WiMAX非搭載チップセットに比べて価格差が小さいため一気に普及が進むかもしれない(画像クリックで拡大)
セットアップと接続は非常に簡単
UQ WiMAX用のデータ端末は4種類提供されている。タイプは、USB接続、PCカード型、PCI Expressカード型の3つ。今回使用したのはUSB接続タイプの「UD01SS」だ。USBメモリーサイズの小型軽量データ端末で、重さは18gしかない。
UQ WiMAXのセットアップは非常に簡単だ。まず「UD01SS」をパソコンのUSBポートに取り付ける。ドライバーはUD01SSに内蔵されているので、インストールは簡単だ。続いて付属CD-ROMから接続用ソフトをインストールする。作業が簡単な上に分かりやすいマニュアルが付属し、作業は10分程度で終わった。
接続作業はインストールしたソフトを起動して接続ボタンを押すだけ。切断も同様だ。オプションから、Windows起動時に自動的に接続するような設定もできる。ダイヤルアップやログインなどの操作は不要だ。電波状態がよければ5~6秒で接続できる。電波状態が悪くなって接続が切れても、ふたたび受信できる場所にくると自動的に接続し直してくれる。
接続ソフトが起動していれば、何も意識せずに、無線LANと同じ感覚でインターネットが利用できる。WEPキーを打ち込んだりする手間がかからない分、無線LANよりも簡単に接続できる。これなら誰でもワイヤレスでインターネットを利用できるだろう。
「UD01SS」はUSB接続型の端末で、現在利用できる端末の中では最も小型軽量。USB端子は折りたためる(画像クリックで拡大)
接続と切断は、ソフトを起動してボタンを押すだけ。タスクトレイからも実行できる。初期状態では、Windows起動後に自動接続するように設定されていた(画像クリックで拡大)
各端末は個別のMACアドレスを持っていて、端末ごとに認証される。ログイン作業などはいらない。データ端末を別のパソコンに取り付けてセットアップすれば、そのパソコンですぐ利用でき、端末の使いまわしが効く。今後はモバイルWiMAX接続機能を内蔵するノートPCの発売も見込まれる。そのためUQコミュニケーションズでは、複数の端末を1つの契約で使えるようにする仕組みを検討しているという。
接続できればかなり速いが、屋内ではつながりにくい
セットアップを済ませて、編集部内で通信速度をテストしてみた。編集部は東京都港区の白金高輪駅周辺にある。UQ WiMAXの2009年2月末時点のサービスエリア(http://www.uqwimax.jp/service/area/)には入っている。測定には上り/下りともに測定できる「RBB TODAY」の「スピード測定」を利用した。
まず窓際で測定してみた。平均で下りは5Mbpsほどだが、最高と最低の差が大きい。接続は安定しているが速度は一定でない。5Mbps程度出て入れば、ADSLぐらいの感覚で使える。
編集部があるビルの窓際で測定(画像クリックで拡大)
●窓際
下り 上り
最高 7.13Mbps 1.26Mbps
最低 2.32Mbps 678kbps
平均 4.92Mbps 931kbps
窓から5mほど離れた場所だと、上りの速度は半分に低下した。下りはあまり変わらない。窓から10mほど離れた場所でも、約5m離れた場所と大きな違いはない。どちらも接続は安定していて途切れることはなかった。
窓際から約5mの距離で測定(画像クリックで拡大)
●窓から約5m
下り 上り
最高 4.92Mbps 1.29Mbps
最低 1.92Mbps 446kbps
平均 2.76Mbps 935kbps
●窓から約10m
下り 上り
最高 4.6Mbps 1.16Mbps
最低 2.28Mbps 764kbps
平均 3.02Mbps 967kbps
窓から約15mの位置では、数値上は10mの場合より少し遅い程度だ。ただ接続は不安定になり、接続できない状態が増えた。
窓から約15mの距離で測定(画像クリックで拡大)
●窓から約15m
下り 上り
最高 3.33Mbps 1.09Mbps
最低 1.04Mbps 271kbps
平均 1.66Mbps 793kbps
編集部のある部屋から廊下に出て、扉越しの接続を試みた。窓から約15mの場所から扉を1枚隔てた場所だ。接続はかなり不安定で、接続できても測定中に途切れることが多かった。なんとか測定したが、インターネットを利用するにはかなり厳しい。
さらにビルの奥へ、扉から廊下に出て測定してみた。ほとんど接続できなかった(画像クリックで拡大)
●廊下、扉の外
下り 上り
最高 1.08Mbps 446kbps
最低 133kbps 37kbps
平均 529kbps 186kbps
テストの結果、接続できても速度のバラつきが大きいことと、建物の中心部になると急激に接続状態が悪くなることが分かった。同じ場所でイー・モバイルを使用してみたが、窓から約15mの場所では通信速度は遅いものの比較的安定して接続できた。UQ WiMAXの方が不安定だったのは、使用する電波がUQ WiMAXは2.5GHz帯を使っていて、イー・モバイルが使用する1.7GHz帯に比べて波長が短いからだ。UQ WiMAXは回折しにくいことが要因の一つだろう。街中を歩き回りながら測定してみたが、見通しのよい大通りでは安定して数Mbpsで接続できるが、一歩路地に入ると接続が不安定で切れやすくなることがあった。これも同じ要因と考えられる。
こうした状況は、今後有料サービス開始に向けて基地局の整備が進めば改善されてくる。NTTドコモのFOMAもサービス開始当初は、800MHz帯を使うmovaよりつながりにくいと言われたが、現在では解消されている。UQ WiMAXもインフラが整備されれば問題ないだろう。
周囲の建物の影響はどれぐらいか
●自宅マンション
下り平均 上り平均
23階 5.17Mbps 852kbps
20階 5.12Mbps 1.19Mbps
15階 9.63Mbps 1.07Mbps
10階 12.44Mbps 1.23Mbps
5階 9.89Mbps 831kbps
出口(1階) 7.92Mbps 533kbps
次に筆者自宅近辺でテストした。荒川の河口に近い高層マンションだ。ベランダで試したところ、接続はやや不安定。窓から3mほど奥に入るとさらに不安定になり、もっと奥に入るとまったく接続できなくなってしまった。ベランダの反対の通路側に回って測定してみると、こちらは安定して接続できた。この方角でマンションの出口(1階)から5階おきに測定してみることにした。マンションの周囲には、目の前に2階建ての建物があり、少し離れた場所に10~12階建てのマンションがある。
結果を見ると10階が下り/上りとも一番速い。見通しが下階より良好で電波の障害物が少ないからだと考えられる。それ以上の階で速度が低下する理由は不明だが、基地局から距離が離れるからかもしれない。
広い屋外でも接続できれば快適
モバイルWiMAXなのだから建物の中でばかりで使っていても仕方ない。ということで近くの葛西臨海公園で測定してみた。
少し離れた場所にある陸上競技場付近。下り平均:12.62Mbps、上り平均: 1.28Mbps。接続は安定している(画像クリックで拡大)
公園入口付近の河口に出たところ。下り平均:2.89Mbps、上り平均:1.03Mbps。接続は安定しているが速度はそこそこ(画像クリックで拡大)
公園内の屋根がある休憩所内。下り平均:1.52Mbps、上り平均:168kbps。接続は安定しているが屋根のある場所では速度が低下した(画像クリックで拡大)
屋根のない障害物のない場所に出ると、下り平均:4.59Mbps、上り平均:909kbpsになった(画像クリックで拡大)
人口渚に出てみたが、下り平均:3.66Mbps、上り平均:1.15Mbps。接続も安定している。開けた場所ではどこでもかなり快適にネットに接続できた(画像クリックで拡大)
展望台前。下り平均:3.28Mbps、上り平均:370kbps(画像クリックで拡大)
展望台最上階。下り平均:13.48Mbps、上り平均:1.17Mbpsで、公園内で最速の場所がここだった。公園内で最も高い場所にあり、屋内ではあるがガラス張りで見通しは良い(画像クリックで拡大)
観覧車前。下り平均:12.06Mbps、上り平均:1.15Mbpsでかなり速い。観覧車内は携帯電話や通信機器の使用禁止と言われたので測定できず(画像クリックで拡大)
JR葛西臨海公園駅前は下り平均:8.56Mbps、上り平均:1.03Mbps。駅構内は下り平均:5.99Mbps、上り平均:217kbpsだった(画像クリックで拡大)
公園内はどこも安定して通信ができた。速度はバラついていたが、電波環境はかなり良好だ。通信速度が遅い場所でも平均して下り3Mbps前後、速い場所では13Mbpsを超えた。電波状態のいい場所ならかなりの速度が出るし、安定性も問題は感じない。
国際フォーラム内は高速に通信可能
ビジネスマンが気になる都心部でも測定してみた。場所は有楽町にある東京国際フォーラム。イベントやコンサートの開催に加え、ビジネス関連の展示会も多い。
東京国際フォーラム入り口前。接続は安定していて速度も速い。下り平均: 13Mbps、上り平均: 1.23Mbps。ホールA~Dの1階もほぼ同様の速度で安定して接続できた(画像クリックで拡大)
ガラス棟1階。ここも入り口とほとんど変わらず、安定して速度が出た。下り平均:13.2Mbps、上り平均:1.17Mbps(画像クリックで拡大)
入り口からエスカレーターで地下におりた場所。入り口とほとんど変わらず安定して速度が出た。下り平均:12.86Mbps、上り平均:826kbps(画像クリックで拡大)
地下1階にある美術館前。ガラス越しに地下の展示ホールが見渡せる。安定して速度が出る。非常に快適。下り平均:12.76Mbps、上り平均:1.01Mbps(画像クリックで拡大)
地下1階のコンコース。レストランなどが並ぶ。ここも安定して速度が出る。下り平均:12.12Mbps、上り平均:1.32Mbps(画像クリックで拡大)
ガラス張りで見通しが良い地下広場だけでなく、地下のコンコースでも接続は安定していて速度も速かった。近くの丸の内仲通りで測定してみたが、平均して下りは2Mbps、上りは1.2Mbps程度だった。UQコミュニケーションが主要エリアや建物に重点的に基地局やアンテナを設置しているかは不明だが、東京国際フォーラムは地下でもかなり快適にネットに接続できた。
気になるのは、既存のFOMAハイスピードやイー・モバイルなどライバルサービスの反応だ。UQ WiMAXが正式スタートして接続可能エリアが広がれば、通信速度で劣り価格も安いとは言えない既存サービスから乗り換える人も出てくるだろう。その際各社が、どのような手を打つのか。高速無線通信を巡る激しいサービス競争が火ぶたを切る。
(文/湯浅 英夫)
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