2009年内に日本でも本格展開する「Windows Phone」 - MS越川本部長に聞いた
2009年2月発表されたWindows Mobileの新バージョンとなる「6.5」では、パートナーリストの中にNTTドコモ、ソフトバンクモバイル、ウィルコムの名前が挙がっている。Microsoftでは2009年後半に向けてWindows Mobile事業の強化を進めており、関連サービスの詳細も次第に明らかになってきたが、日本国内で新製品やサービスはどのように展開されるのだろうか。日本のWindows Mobile事業を統括するマイクロソフトのモバイルコミュニケーション本部長・越川慎司氏に詳細を聞いた。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2009/03/13/windows_phone/
今年第4四半期には6.5搭載機が日本でも発売
マイクロソフト モバイルコミュニケーション本部長・越川慎司氏
まず、最も気になる搭載製品の登場時期だが、「Windows Mobile 6.5自体の開発は春先には完了する予定です。既に端末ベンダーの方には開発途中のバージョンに触れていただいており、当社の発表から搭載製品発売までのスケジュールは、おおむねこれまでと同様になると思います」(越川氏)とのことで、具体的には、今年第4四半期には日本国内でも搭載製品が発売される見込みだという。
欧州市場では東芝がこの夏に「TG01」の発売を予定しているように、Windows Mobile 6.5の前に投入されるWindows Mobile 6.1ベースの製品も多い。HTCは、今年第2四半期にも発売する新製品「Touch Diamond 2」「Touch Pro 2」に、当初は6.1を搭載して出荷し、準備が整い次第6.5への無償アップデートを提供するとしている。
TG01
越川氏によれば「マイクロソフトとしては、6.1から6.5へのアップグレード版を提供することはありません」という。これには、6.5が要求するハードウェア性能が従来よりも若干上がっていることや、組み込みOSという性質上、PCのように簡単に上書きアップデートすることがそもそも難しいという事情がある。Touch Diamond 2やTouch Pro 2は、あくまでHTCが独自に対応するケースということになる。加えて、通信事業者を通じて販売される製品については、事業者の対応が必要になる場合もある。
ただし、マイクロソフトとしても6.5が登場するまで現行製品の「買い控え」が発生することは望ましくないと考えており、アップデート対応が行われること自体は歓迎だという。実際、過去に日本でもイー・モバイルが「EM・ONE」でWindows Mobile 5.0から6へのアップデートを行ったことがあるので、時期や製品の性質によっては、一部製品で同様の対応が行われる可能性もある。
Touch Diamond 2
Touch Pro 2
なお、KDDIとイー・モバイルが賛同企業として名乗りを挙げていないことについては、6.5の発表時点ではまだ製品投入に向けた決定が行われていないというだけで、両社による搭載製品発売の可能性が否定されるものではないとしている。また、これまで日本国内でWindows Mobile搭載スマートフォンは「Windowsケータイ」の愛称でPRされてきたが、今後基本的には新たに打ち出された「Windows Phone」が世界共通ブランドとして使われる見込みだ。
My Phone日本語版も同時提供予定、国内独自サービスの構想も
今回、OS自体がバージョンアップすることに加えて、さまざまなサービスの拡充が発表されている。目玉とされているのが、Windows Phoneに保存されている電話帳や画像といった情報をネット上のサーバーにバックアップする「My Phone」だ。現在は英語などの一部言語向けにベータサービスが提供されているが、日本語版の開発も行われている。越川氏は「6.5搭載製品が出るくらいのタイミングで日本でも提供したい」と話しており、国内でのWindows Mobile 6.5搭載機発売までには日本語版My Phoneの正式サービスを用意する考え。また、Windows Mobile 6.1向けにもクライアントソフトを提供する予定だ。
My Phoneは、Windows Mobile搭載機器に保存された情報を自動的にWeb上のサーバーにバックアップするサービス。電話帳、スケジュール、メール、画像や動画といった情報がサーバーと同期され、Webブラウザからも参照可能となる
同時に発表されたアプリケーション販売サービス「Windows Marketplace」は、Windows Mobile 6.5のみの対応となるが、こちらも日本語版のユーザーインタフェースを用意する予定という。アプリ販売というとAppleがiPhone向けに提供している「App Store」を思わせるが、マイクロソフトでも「Xbox Live」などでは大規模なコンテンツ販売の実績がある。そういった意味では、既に仕組みは存在しており、あとはそれをいつ携帯電話向けにも提供するかという時期の問題だったとも言える。 ただし越川氏は、日本では決済方法として「通信事業者による回収代行の形態を取れるようにしたい」と話している。携帯電話のコンテンツやアプリの料金を月々の電話代と合わせて支払うのが当たり前になっている日本では、決済用のアカウントを意識させること自体がアプリ購入に対する障壁になりかねない。ユーザーIDとパスワードを入力し、その後でさらにクレジットカードや電子マネーの番号を入力したり、決済用ポイントの減算操作をしたりといったプロセスは、PCのオンラインショッピングでは当たり前だが、少なくとも日本の携帯電話の世界では面倒な部類の操作だ。実現すればWindows Mobile用ゲームなどの販売に弾みがつく可能性も高い。
また、越川氏はMy Phoneについても「ただ日本語にしてそのまま出すだけではなく、できれば何らかの独自の付加価値を乗せてご提供したい」と話しており、例えば各社の絵文字や"デコメ"への対応など、日本における携帯電話の使われ方にフィットしたサービスとして提供できれば理想的だとしている。
徐々に表れ始めた「調布効果」
このように日本独自の機能を構想できることの背景には、2008年よりWindows Mobileの開発の一部が、東京・調布市の技術センターで行われるようになったという同社の体制転換がある。端末の開発にあたって通信事業者の意向が強く作用する日本では、数年前までスマートフォン市場そのものがほぼ存在しないという環境だったが、W-ZERO3シリーズの定着、Touch Diamondのヒットなど、現在ではWindows Mobileが一定の存在感を示せるようになった。
そして、HSDPAなどの高速なネットワークが安定して使用できる場所というのは、世界を探しても日本の都市部以外にはあまり見あたらない。日本では定額データ通信の月額料金は、絶対的な金額ではやや高いかもしれないが、得られる実効スループットを分母に据えて考えるとむしろ安い。開発チームも「日本には常に次世代のモバイルネットワークがあると考えて間違いない」(越川氏)という認識だという。スマートフォンの先進的な使い方が生まれる場所として、日本市場の重要性が同社の中で確かに高まっている様子である。
また、開発拠点が日本に設けられたことのメリットとして大きいのが、日本語を含むマルチバイト文字への対応だ。従来、漢字圏の言語に対応したバージョンのソフトウェアやサービスは、文字コードの取り扱いに手間がかかるため、ローカライズが後回しになりがちだったほか、文字化けする、入力フォームに文字が入らないといった不具合がなかなか解消されないという問題が起きることもあった。
しかし、マルチバイト文字の取り扱いで長年ノウハウを積み重ねた日本で開発が行われることで、今後はグローバル版と大差ないタイミングでリリースが可能になっていくという。6.5搭載端末の国内投入時期について今の段階で言及できるのも、このような体制の変化があるからこそと言えるだろう。
デバイスとサービスの統合が課題
このように、「Windows Phone」の展開に向けた下地づくりは、順調に進んでいるように見える。あとは、このWindows Phoneと、Windows Liveブランドの各種Webサービス、そしてPCであるWindows Vista/7との連携・統合を進めることがミッションとなる。
Mobile World Congress 2009では、CEOのSteve Ballmer氏がプレゼンテーションを行った。PC / 携帯電話 / Webを"Windows"ブランドの製品・サービスで統合する戦略をあらためて説明
2008年、イー・モバイルが発売したTouch Diamondがすべての携帯電話の中で売上トップとなった時期があった(「BCNランキング」2008年10月第2週)が、多くのユーザーの目には、薄型で格好の良いタッチパネル携帯であることや、高速データ通信が定額で利用できることが大きな魅力として映っていたようである。逆に言えば、Windows Mobile搭載スマートフォンであるということは、店頭ではそれほど強く意識されていたわけではないのかもしれない。
また、最近はマイクロソフトから矢継ぎ早に新しいWebサービスが発表されているが、「Windows Live Hotmail」「Windows Live Messenger」のような歴史の長いサービス以外は、多くのユーザーによって広く使われているとは言い難い。
同社のサービスの魅力やPCとの親和性の高さによってWindows Phoneへの関心が高まり、Windows Phoneからアクセスしやすいという理由でWindows Liveの各サービスが選ばれるようになるという正のスパイラルを日本市場で生み出すことができるのか。それが、マイクロソフトのWindows Mobile事業に課せられた今後の課題となるのだろう。
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