データ利用上限を設定したサービスが主流
パソコン向けのモバイル・データ通信サービスが英国や米国で普及し始めている。その背景にはHSDPA(high speed downlink packet access)による下り伝送速度の高速化や端末購入時の割り引きなどを工夫した事業者の料金プランの充実などがある。固定ブロードバンドの代替サービスにもなりそうだ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/COLUMN/20090130/323867/
(日経コミュニケーション編集部)
英米の携帯電話事業者によるパソコン向けデータ通信サービスの提供が本格化してきた。特に,料金プランや対応端末の提供,データ利用量の上限設定などで工夫が見られ,利用者も増えている。
英米のデータ通信サービスは,日本の同種のサービスと比べて,次の点が異なっている。(1)データ利用量の上限を設定したプランが主流であり「無制限」のプランはあまり見られないこと,(2)利用上限を超過した場合の取り扱いは通信事業者によって異なっていること──といった点である。
英国は月4200円で10Gバイト
英国では,HSDPA対応のUSB端末を使ったパソコン向けデータ通信サービスの提供が活発になっている。サービス提供事業者としては,T-モバイルUKと3(スリー)UKが積極的。両社は複数のプランを提供しており,USB端末も契約条件によって価格を値引きしている(表1)。ハイエンド向けでは「月30ポンド(約4200円)で上限10Gバイト」が相場となっている。
表1●英国の携帯電話事業者におけるデータ通信専用プランの例
通信方式はすべてHSDPA。1ポンド=約140円で計算。
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米国でも,英国同様にパソコン向けデータ通信サービスの提供が本格化している。料金プランのラインアップ(表2)は各社とも多くはない。ベライゾン・ワイヤレスやAT&Tモビリティは「月60ドル(約5640円)で上限は5Gバイト」がハイエンド向けプランの相場となっている。T-モバイルUSAは,データ通信容量の上限を設けていない。
表2●米国の携帯電話事業者におけるデータ通信専用プランの例
1ドル=約94円で計算。
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もっとも,英国でのデータ通信サービスはHSDPA対応が標準的だが,米国でHSDPAに対応するのはAT&Tモビリティだけ。ベライゾン・ワイヤレスとスプリント・ネクステルはcdma2000 1xEV-DOでサービスを提供する。
T-モバイルUSAは他の3社と異なり,第2世代携帯電話であるGSMの拡張仕様「EDGE」(enhanced data rates for GSM evolution)を使ってサービスを展開する。他事業者と比べて伝送速度が劣る点は否めないが,データ利用量の上限や価格設定でその不利を補っていると考えられる。
各社ともにパソコンに接続するデータ通信用機器には,USB接続型もしくはPCカード型を用意している。
上限超過時の対応は異なる
英国,米国いずれもデータ通信専用プランの多くは,データ量の上限を設定している。だが,サービスを提供する事業者は,ユーザーが上限データ量を超えたら即利用できなくする,という運用をしていない。
そもそもユーザーがデータ量の上限を超過しない対策の一つとして,通信事業者はサービスの提供に際し「フェア・ユース・ポリシー」をユーザーに提示している。データ通信利用に関する約束事がうたわれており,中には「P2Pサービスを使わないこと」と明記する通信事業者もいる。
ユーザーがデータ量の利用上限を超過した際の対応は,各事業者によって様々である。(1)上限を大きく超過している場合,超過分を従量課金にする例,(2)上限を超過した場合,翌月以後,現在よりも大きなデータ上限が設定されているプランしか契約できないようにする例,(3)上限の超過の度合いによって,通信事業者側で強制解約できるような契約条件にする例──などがある。
固定ブロードバンドの代替進むか
これまで業界関係者は,欧米の携帯電話市場におけるモバイル・データ通信の遅れを指摘してきた。だが,パソコン向けのデータ通信市場からモバイル・データ利用に勢いがつき始めてきたようである。
3(スリー)UKのケビン・ラッセルCEOは2008年10月,「モバイル・ブロードバンド」サービスの加入者が同社の加入者の約3割(60万加入)に達しており,2008年9月は固定回線からの乗り換えがこれまでで最も多かったとコメントしている。現在,各国で提供される固定ブロードバンド・サービスの伝送速度次第では,携帯電話網を使ったモバイル・ブロードバンド・サービスが固定通信市場を代替するケースが増えることが予想される。
しかし欧米の携帯電話事業者にとって,現時点ではモバイル・ブロードバンドの普及は両刃の剣である。パソコンによるデータ通信は携帯電話端末によるデータ通信よりも,大量のトラフィックを発生させる。そのため,携帯電話網のキャパシティ不足が深刻になると思われる。
ただし,こうした設備のひっ迫によって,欧米の携帯電話事業者が周波数利用効率の高いLTE(long term evolution)の導入を早める効果もあると考えられる。
岸田 重行(きしだ しげゆき)
情報通信総合研究所 主任研究員
1990年NTT入社。1997年より現職。国内外の携帯電話市場に関して,サービス動向から企業戦略まで広く調査研究を行っている。「700MHzオークション 結果はグーグルの思惑通り」(日経コミュニケーション2008年4月15日号),「欧米MVNO市場の新潮流第3回 市場混乱の中,新しいビジネスモデルも登場」(日経コミュニケーション2008年5月1日号)など記事執筆,講演多数。
この記事は情報通信総合研究所が発行するニュース・レター「Infocom移動・パーソナル通信ニューズレター」の記事を抜粋したものです。
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[2009/02/27]
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