方針転換…ソフトバンクモバイルは守りに入ったのか?
昨年まで破竹の勢いを見せていたソフトバンクモバイルだが、なんだか最近、ちょっと勢いが弱まっているように感じる。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20090212/1023695/?top
例えば、先頃発表された春商戦モデル。ダブルワンセグチューナーを搭載したシャープ以外は、どれも個性に乏しいものばかり。VIERAやNECなどはNTTドコモ向けをそのまま持ってきてしまったかのようだ。ちょっと前なら、PANTONEの20色展開やシャア専用ケータイ、昨年は「インターネットマシン元年」として、シャープのフルキーボード搭載モデル「922SH」や、アップル「iPhone」、「OMNIA」などで話題を振りまいてきただけに、拍子抜けしてしまった。
春商戦モデルに登場した孫正義社長とロンドンブーツ1号2号(画像クリックで拡大)
また、料金施策にしても同様だ。月額980円の「ホワイトプラン」で契約者数を爆発的に増やし、他社も980円に追随せざるを得ない状況を作り出したのは立派だった。Yahoo!BB・ADSLのような価格破壊をケータイ業界を起こしたのは、まさに革命だった。
しかし、先頃980円を打ち破る780円という価格設定をイー・モバイルが投入してきたにもかかわらず、対抗策を打ち出せずに黙りを決め込んでしまっている。
春商戦モデルの発表会時に「780円をどう思うか?」という質問に対し、孫正義社長は「うちには月月割があって、端末価格が安いので、トータル的には見ればこちらの方が価格競争力がある」と言っていた。確かにその通りかも知れないが、孫社長から言いわけめいたものは聞きたくなかったなぁ、というのが正直な感想だ。
イー・モバイルのネットワークで定額データ通信を開始
ネットワークに関しても不安を感じる。先日イー・モバイルのネットワークを借りて、定額データ通信サービスを提供するという発表があった。
MVOがMVNOをやるのは構わない。実際、いまのところ、そういったことを禁止する仕組みは存在しない。近日中にはウィルコムがNTTドコモのネットワークを借りるという話も明らかになることだろう。いまもイー・モバイルは地方においてはNTTドコモのネットワークを借りてサービスを行っている。
ウィルコムのように次世代PHSのつなぎとして他のシステムを借りたり、イー・モバイルのように、将来的に全国ネットワークを構築する前のつなぎとして、NTTドコモ網を借りるというならば理解できる。しかし、今回のソフトバンクモバイルは、自社で所有するHSDPA網を強化することをあきらめてしまったとも言えるのだ。
ソフトバンクでは、決算会見で設備投資が下がっていることを強調している。しかし、ネットワーク事業者は常に設備投資をし続けなくてはいけない宿命にあること忘れてはいけない。5万以上の基地局を設置したからといって、それで設備投資が完了するものでもない。
iPhoneで見られないS-1バトル
ソフトバンクモバイルでは今年の目玉として「Sー1バトル」というイベントを企画してきた。1日2組の芸人の動画を閲覧でき、面白かった方に投票。1カ月間にもっとも面白かった芸人に1000万円が与えられるという。さらに年間チャンピオンには1億円。つまり、賞金総額2億2000万円にもなるという。
今年の目玉は「Sー1バトル」というイベント(画像クリックで拡大)
動画を閲覧すると言うことで、ユーザーのARPU(月間の通信料)は飛躍的に向上するだろう。ソフトバンクモバイルにとって、ARPUは悩みの種だ。いまのお笑いブームに乗り、「Sー1バトル」をソフトバンクモバイルユーザーしか見られないコンテンツにすることで、ユーザーを集め、ARPUを高めたいようだ。そのプロモーション費用と考えれば、2億2000万円は安いはずだ。
先週末、早速、3月から始まる「S-1バトル」を開始してすぐに見られるようと事前登録しようと思って、Sー1バトルのサイトにアクセスしてみた。すると、「ご使用の携帯電話では本サイトをお楽しみいただくことはできません」と注意書きページに飛んでしまった。どうやら、iPhoneは非対応機種になっているようなのだ。
iPhoneは「S-1バトル」の非対応機種
S-1バトルはiPhoneで見られないことの矛盾
孫社長は記者会見の時、「昨年はインターネットマシン元年だった。今年はインターネットマシンでなにを楽しむか。ケータイがより楽しいという世界を作っていきたい。コンテンツの勝負に時代が変わってくる」と宣言していた。
しかし、実際はインターネットマシンであるはずのiPhoneでS-1バトルは見られない(ソフトバンクモバイルでは、最近は922SHだけでなく、iPhoneなどもインターネットマシンと呼んでいる)。
iPhoneユーザーのほとんどは、上限いっぱいまでデータ定額制を利用しているようなので、これ以上の収入増は期待できない。むしろ、S-1バトルを視聴されてはネットワークの負荷につながりかねないために「非対応端末」にしてしまったのかと、うがった見方もしたくなる(もしかすると、iPhone向けに解放すると、PCや他キャリアケータイから閲覧できてしまうのかも……)。
現在、対応中なのかもしれないが、言っていることとやっていることがあまりに違うので、ちょっと面食らってしまった。
先日、ソフトバンクモバイルに納入するメーカー関係者と話をしていたら「芸人に2億2000万円も払えるのなら、ちょっとでもメーカーの開発費に回してほしい」とぼやいていた。
NTTドコモはメーカーに対して100億円の開発費を負担するという。一方で、ソフトバンクモバイルは端末関連の調達コストを大幅に削減する計画だ。
ソフトバンクモバイルは業界3位として暴れまくって攻め続けるのが面白い。しかし、最近はなんだか守りに入ってしまったようにも思えて、とても寂しくなってしまうのだ。
著者
石川 温(いしかわ つつむ)
ケータイジャーナリスト。日経ホーム出版社に入社し、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。ケータイ業界を中心にヒット商品、クルマ、ホテルなどで記事を執筆。2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界はキャリア、メーカー、CPなど幅広く取材。2008年8月に技術評論社より「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 ~AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか」を出版。
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