「今年も暴れます」――イー・モバイル2009年新戦略を聞く
ケータイ業界の風雲児として、2008年に名を馳せたのイー・モバイル。電気通信事業者協会の調査によると、2007年は約20万台だった同社の契約者純増数は、2008年は一気に90万台を超えた。飛躍的に数値を伸ばすことができたのは、定額でHSPAのサービスを提供している同社のデータ通信サービスが、多くのユーザーに受け入れられたため。また、昨年パソコン業界の話題をさらったNetbook(UMPC)とのセット販売による、効果的なマーケティングにある。
http://ascii.jp/elem/000/000/207/207331/
イー・モバイルとNetbookの共同販促はすでに量販店では見慣れた風景となった
しかし、2008年2月にはUQコミュニケーションズがMobile WiMAXの試験サービスを開始。4月にはウィルコムが次世代PHS「WILLCOM CORE」の試験を始めると言われている。先行するデータ通信の競争において、イー・モバイルに対する競合が増える1年になるわけだ。
イー・モバイル副社長で、戦略のキーマン阿部基成氏に2009年の展望を聞いた。
順調だった2008年3つのカギ
2008年はおかげさまで、新規契約数を大幅に増やすことができました。これには「高速サービス」「セット販売」「スマートフォン」の3つの要因があったと思います。
まず、我々の強みである高速サービスですが、もともと2007年に下り3.6MbpsのHSDPAのサービスを他社に先駆けて定額で開始し、同年12月には7.2Mbpsを開始しました。そういった一連の展開でユーザーに「高速のデータ通信サービスならイー・モバイル」といったイメージを持っていただいただくことができたのではないでしょうか。
2008年11月に登場した「D21HW」。HSUPAにも対応しており「どうせ買うなら上りも早いほうがいい」とユーザーに好評のようだ
2008年には上りの回線速度も大幅に向上させ、上り最大1.4Mbpsを実現するHSUPAをスタートさせました。
HSUPA対応のデータ通信カードの店頭価格は「新にねん割」にご加入いただいても、1万3000円ほどします。我々も驚いたのですが、高額にもかかわらず、新規ユーザーの半数以上がHSUPA端末を選んでいます。買い換えのお客さまには上りに速度を求めるニーズがあるようです。
また、昨年話題になったNetbookとのセット販売もうまくいきました。我々の端末の主な販路は量販店ですが、そこでASUSさんの「Eee PC 901」など人気のNetbookと組むことができたため、店頭での訴求効果が大きかった。店舗によってはNetbookだけでなく、PSPなどのゲーム機とセット販売するケースもあるようですし、ユーザーに我々のサービスを拡げてくれました。
それから、2008年3月から音声通話のサービスを始め、「Touch Diamond」に代表されるスマートフォンを展開しました。Touch Diamondの好調な売れ行きは「回線速度が速いスマートフォンは使い勝手がよい」とユーザーに支持をされたためだと考えています。iPhoneが一定のユーザーのニーズを掴んだことで、以前は考えられなかったキーのない端末に対してもユーザーの抵抗がなくなってきたこともあると思いますが。
新通信規格にはマーケティングで対抗
大手三社が寡占する中、イー・モバイルの業界シェアは現在1%前後にまで成長した
今年登場する、新しい通信規格には当然注目しています。我々も2010年には下り最大42MbpsのDC-HSPAを導入したいと思っています。周波数をいただいてからの話になりますが、その後にLTEが控えているので、なんとしてでも来年中にサービスインさせたいですね。
競争が激しくなることに対しては、HSPAの定額サービスを他社に先駆けて導入し、先行しているメリットを最大限活かしていくべきだと考えています。エリア的にも全国津々浦々にあまねく展開しているとは言えませんが、以前に比べるとかなり充実させてきました。他のキャリアの新通信規格の対応エリアが広がる前に、我々のサービスをアピールしていきます。
そういった意味でも、今年もユーザ数拡大にNetobokなどとのセット販売は欠かせません。最初セットで販売していたデータ通信カードは3.6Mbpsのものでしたが、徐々に7.2Mbpsに変えてきています。そして、今年どこかのタイミングでHSUPA対応のデータ通信カードとのセット販売が出てくるでしょう。他社の動向を見ながら、その投入のタイミングをうまく見極めたいと思っています。
Mobile WiMAXなどがどの程度音声サービスに関する取組みを行なうか分かりませんが、我々のスマートフォンならモデムとしても活用できますし、もちろん通話もできます。実際、通話もデータ通信端末としても両方使えるといった点は、他社にない大きなアピールポイントでしょう。
近々USBデータ端末「H11LC」が発売されます。これは通話機能やミュージックプレイヤーを搭載したデータ端末なんですが、2万9980円と戦略的な価格で展開する予定です。ユーザーによっては、ケータイは持っているけれど、いざというときにデータ通信端末で通話もできると助かると考える人もいるでしょう。多様なユーザーの嗜好に幅広く応える選択肢が必要だと考えています。
まもなく市場に投入される「H11LC」。低価格にもかかわらず音声通話もできる優れものだ
価格に関しても同様に多様性を出していきたいですね。端末費用の回収の方法もいままでのように「初期投資を安くする代わりに2年縛り」といった形だけでなく、より自由度の高い契約も考えていく必要があるでしょう。
例えば、「EM・ONEα」という端末があります。雑誌「MSXマガジン 特別号」と共同キャンペーンなどを展開していますが、まだまだ店頭でのユーザーに対する訴求が足りていない(関連記事)。実は、この端末で「1年間使い放題キャンペーン」という、新しいマーケティングを展開しています。これは、端末代に相当する6万9800円を最初にお支払いいただくと、通信料が1年間無料になるというものです。他ではやっていないキャンペーンなのではないでしょうか。
ここまで、極端ではなくても、初期費用を1万~2万円だけいただいて、その代わり2年縛りではなく、契約期間を半年や1年にするといった方法も考えられます。
Mマガクラブで、イー・モバイル向けMSXエミュレーター配布
MSXのゲームやゲームの自作ができるMSX BASICが収録された「EM-ONEα」の同梱版も限定発売中だ
ASCII.jpも協力する「Mマガクラブ」から、エミューレーターソフト「MSXPLAYer」をインストールすれば、伝説の8bitマシン「MSX」のゲームをWindows Mobile端末で遊ぶことができる。
また、同サイトではMSXゲーム10本が収録されている「MSX エミューレータ」の付いた「EM・ONEα」が販売されている。ここでしか買えない限定1000台のスペシャルパッケージだ。懐かしさ溢れる音や映像はあなたをトリコにすること間違いなし。ルールや操作が簡単ながらも奥深いゲームを実際に楽しんでみてほしい。
■関連サイト
「EM・ONEα」「MSX MAGAZINE」スペシャルコラボキャンペーン
Mマガクラブ
2009年もやはりスマートフォンを盛り上げる
今年はAndroid端末の登場などもあり、スマートフォンに盛り上がってほしいですね。我々がAndroid端末を展開するかは否かは現時点では決まっていません。これまでは先行し、ある程度OSとしては成熟していたWindows Mobile端末を採用してきました。しかし、Windows Mobileに固執するつもりはありませんし、新しいプラットフォームで展開することも視野に入れていきます。
ただ、新しいOSの端末を新たに開発し、イー・モバイル用のものを細かなところまで作り込んでいくのは正直我々の規模では難しい。HTCにとってTouch Diamondがそうであったような、「グローバルメーカーの戦略端末」を日本市場にいち早く導入するといったアプローチにこそ、我々の強みがあると思っています。OSにこだわりませんが、スマートフォン市場で暴れて存在感は出していきたいですね(笑)。
阿部副社長。自身はスマートフォンという言葉は「あまり好きでない」と述べる。確かに、Touch Diamondでも、「タッチケータイ」といった打ち出し方をしていた
我々の課題としては、スマートフォンならではのアプリケーションをインストールして、自分なりにカスタマイズできるという特性が十分打ち出せていないことです。「WMWifiRouter」というWindows Mobile端末をWi-fiのモデムとして使えるソフトは非常にご好評をいただいていて、ダウンロードされる全ソフトの中でかなりの割合を占めています。こういった人気のコンテンツもありますが、まだまだ十分な数ではありません。ゲームはケータイに欠かせないコンテンツの1つと考えており、Windows Mobile向けに国内初のMSXゲームの配信などを行なっていますが、こういった取組みもまだまだ打ち出せていないというのが正直なところです。スマートフォンをもう一段階浸透させていくためには、ゲームができることのアピールが重要だと思っています。
もっとも、私自身は「スマートフォン」という言葉自体がマーケットで少し浮いてしまっているように感じています。お客さんに分かりにくいので、言葉としては使わないほうがいいように思うこともありますが、実際には店頭で使っていますね。例えば、「おサイフケータイの機能は付いてますか?」と聞かれたときに、「スマートフォンなんでできません」と言うと納得してくれることもありますし(笑)。
ただ、多くの人に受け入れられるためには、なるべくケータイの派生としてスマートフォンを見ていただいたほうが分かりやすくていいのではないでしょうか。最近はケータイも機能をたくさん詰め込むだけでなく、シンプルに機能をそぎ落として特徴を前面に出す端末が生まれています。我々も「PCとのデータの同期に強い」といった点や、「快適なフルブラウザー」といったスマートフォン端末ごとに、強みを強調して打ち出していきたい。
イー・モバイルのHSPAの基地局にあるアンテナ
それから、今年はインフラ投資にこれまで以上に力を入れていきます。他社よりもスピードにこだわってきたネットワーク品質は今年も競争差別化に繋がるポイントです。エリアの狭さが指摘されていますが、ユーザーの大半がいる首都圏や関西圏はかなり充実してきています。今年の一番の課題は東京の地下鉄になるでしょう。まだ地下鉄は「白山」「千石」「巣鴨」の3駅しか対応できていないわけです。電車の数の多さや置く場所がないといった、我々だけではなかなか解決できない問題があるのが難しいところですが……。
我々としてはデータ通信のマーケットと音声のマーケットの組み合わせを狙うのはもちろん、新しい領域を狙う必要があると思っています。例えば、家庭の中に普及している家電がネットワークと繋がることで、さらに便利な生活が送れるようになるといったことも今後起こり得るわけです。そういった新たなサービスなどが生まれたときに、我々のインフラの強みが活きるのではないでしょうか。
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