起爆剤が見あたらない……厳しさを増す2009年のケータイ業界を占う
2009年のケータイ業界は昨年同様に厳しい環境が続きそうだ。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20090106/1022500/
国内の契約者数が1億件を突破。販売奨励金の見直しによって販売台数が落ち、さらにワンセグやFeliCaに続く目新しい機能やサービスがない中で、次の起爆材が見あたらない状況だ。
端末メーカーが狙う「PDC巻き取り市場」
そんな中、端末メーカーが注視している数少ない市場と言えば「PDCの巻き取り」に他ならない。
NTTドコモとソフトバンクモバイルはW-CDMAサービスを提供して7年近くが経過しているが、一方で2Gと呼ばれるPDC方式の携帯電話のユーザーもまだかなりの数が残っている。
NTTドコモの場合、全ユーザーが5403万件いる中で、PDCユーザーは697万件と実に13%の割合となっている。ソフトバンクモバイルに関しても、1986万件の全ユーザーに対して15%の295万件がPDCユーザーだ。
キャリアにとって複数の通信方式を続けるのは経営面からもかなり効率が悪い。そのため、一刻も早くW-CDMA/HSDPAに集約したいと考えている。2010年以降にはLTEの開始も視野に入っているのでさらなる設備投資も必要になってくる。
両社ともすでにPDCの新規契約は打ち切っている状態だ。ソフトバンクモバイルは2010年3月31日をもってPDCのサービス自体を終了し、停波させると発表済み。NTTドコモの停波の時期もいずれ明らかになるだろう。
ここで注目されるのが、PDCからW-CDMAへの乗り換え需要だ。キャリアの都合によってPDCを停波するのだから、既存のPDCを使っているユーザーに対して、FOMAへの機種変更の優遇策がとられることだろう。
昨年の端末の販売台数は4000万台を切る程度しかなかったが、PDCから3Gへの乗り換え需要は両社を合わせて約1000万台と予想される。まさにケータイ業界の「埋蔵金」ともいえる市場だろう。
メーカーとしてもこの特需の逃す手はない。ここでいかに新規ユーザーを確保するかに躍起になっている状況だ。
端末メーカーが分析するに、現在もPDCを使い続けているユーザーは、携帯電話の新しい機能には一切興味がなく「とりあえず話せてメールが使えればいい」という程度でしかない。機能よりもPDCのころの本体サイズやバッテリー寿命のほうが気になっている層だ。NTTドコモの2008年夏モデルとして登場した706ieシリーズは、まさにこういったユーザーをねらったラインナップでもあった。
各メーカーとも2009~10年にかけてはPDCユーザーをなびかせるような「とにかく簡単で、小さくて、バッテリー寿命が長い」というケータイが登場させていくことだろう。
「誰にでも使いやすいケータイ」をコンセプトに、ドコモが2008年8月15日に発売した「N706ie」。片手で開けやすい「ワンタッチオープン」、文字が見やすい「拡大」もじに対応、スタミナバッテリーで安心というのがウリだ(画像クリックで拡大)
花開くか?MVNO市場
もう1つ、2009年に注目の市場といえば、MVNOだ。ネットワークを持たない企業でも、既存のキャリアからネットワークを借りて、携帯電話やデータ通信のサービスが行えるようになる。
すでに日本通信がNTTドコモのネットワーク借りてサービスを提供中。今年2月にはノキアもNTTドコモ網で「VERTU」というセレブ向けケータイサービスを開始する予定だ。
水面下では、ウィルコムが次世代PHSのつなぎとしてNTTドコモのHSDPA網を借りて、定額データ通信サービスを準備しているようだ。
総務省としては、これまで通信事業の経験のない全く新しい企業に参入してもらうことで、業界内の競争を促進させようと考えていた。そのため、2007年後半に発表された「モバイルビジネス活性化プラン」では、MVNOに対する取り組みが積極的に語られていた。
MVNOの中でも今後、かなり期待できそうなのがモバイルWiMAXだ。2月から試験サービスを開始するUQコミュニケーションズは周波数の割り当てに際し、MVNOの受け入れが条件のひとつになっていた。すでに同社はMVNO希望事業者に対し、積極的に事業説明会を開催。1回線あたり月額3465円で貸し出すことを明らかにしている。
ただ、MVNOを行うにはかなりの体力が必要とされる。端末も自社で調達しなくてはならなかったり、また販売網も同じく構築しなくてはいけない。かなり魅力的なサービスでない限り、ユーザーを集めるのは大変なはずだ。
かつてアメリカでMVNOとして通信業に参入したディズニーもあっさりと撤退した経緯がある。ディズニー関係者は「うちが得意なのはキャラクター。販売網などは素人だったために失敗してしまった」と敗因を語った。
そのため、ディズニーが日本に上陸する際は、販売網や通信サービスの中身はほとんどソフトバンクモバイルに任せ、ディズニーは端末のデザインやコンテンツにおける世界観を描くことに集中している。ディズニーとソフトバンクモバイルが「これはMVNOではなく協業」といっているのは、こうした理由があるからだ。
販売網や通信サービスをソフトバンクモバイルに任せることで日本上陸を果たしたディズニー(画像クリックで拡大)
MVNOが果たして成功して業界を活性化するまでに至るのかが注目と言えるだろう。
2009年はほかにもグーグルケータイの日本上陸といった明るい話題がある一方で「どこかのメーカーが撤退するのではないか」という暗い噂話も飛び交っている。
いずれにしても、日々ニュースに事欠かない話題の多い業界であることには変わりはなさそうだ。
著者
石川 温(いしかわ つつむ)
石川 温
ケータイジャーナリスト。日経ホーム出版社に入社し、月刊誌『日経トレンディ』編集記者に。ケータイ業界を中心にヒット商品、クルマ、ホテルなどで記事を執筆。2003年にジャーナリストとして独立。ケータイ業界はキャリア、メーカー、CPなど幅広く取材。2008年8月に技術評論社より「グーグルvsアップル ケータイ世界大戦 ~AndroidとiPhoneはどこまで常識を破壊するのか」を出版。
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