ガラバコス・ケーライは「実験機」
ワンセグ受信機能,FeliCaによる電子決済サービス,GSMによる国際ローミング,HSDPA対応の高速データ通信,GPSによる位置情報サービス,果てはBluetooth機能や無線LANによる通信機能まで——日本の携帯電話機の高級機種は,多機能な「全部入り」が当たり前になっている。
http://techon.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20081211/162733/
こうした取り組みは海外のそれと大きく異なるため,揶揄(やゆ)や自嘲(じちょう)を込めて「ガラパゴス・ケータイ」と呼ばれることがある。だが,携帯電話機の多機能化は今,世界にも広がりつつある。
例えば,電子決済サービスで利用できる無線通信規格「NFC(near field communication)」への対応やモバイル・テレビ放送対応は今後,世界の携帯電話機の標準的な機能になりそうだ。実際,欧州では携帯機器向け放送規格「DVB-H(digital video broadcasting-handheld)」の対応サービスが既に始まっている。携帯電話機の出荷台数で世界トップシェアを握るフィンランドNokia Corp.は,GPSを使った位置情報サービスなどへ重点を置く姿勢を見せている。
日本の端末は,進化の袋小路に迷い込んだ「ガラパゴス・ケータイ」ではない。「将来普及する新機能を先取りし,世界に先駆けて試す実験機」(ある部品メーカーの技術者)なのである。
今回,NTTドコモの「FOMA 906i」シリーズ全8機種を分解,日本の高級機種の現状を探った(表1)。なお,分解には部品メーカーや携帯電話機メーカーの技術者,携帯電話機の分解調査を手掛けるフォーマルハウト・テクノ・ソリューションズの協力を仰いだ。
表1 「FOMA 906i」シリーズ全8機種の主な仕様 「FOMA 906i」シリーズは,前シリーズの「FOMA 905i」シリーズと同じく多数の機能を盛り込んだ,いわゆる「全部入り」の携帯電話機である。全8機種で高速データ通信のHSDPAやGSMによる国際ローミング,FeliCaに対応する。さらに「FOMA N906iL onefone」を除いた7機種でワンセグ受信機能,「FOMA SH906iTV」を除いた7機種でGPS受信機能を備えている。Bluetooth機能や無線LANに対応する端末もある。 (画像のクリックで拡大)
分解を通じて分かってきた事実を,ワンセグやFeliCa対応機能の進化(第1部「ワンセグと FeliCaのアンテナに工夫」参照)や,薄型化への取り組み(第2部「多機能と薄さを両立,熱対策にも苦心」参照),多機能化に伴う雑音対策の実情(第3部「多機能化に伴い,ケースやシートが増加」(12/26公開予定)参照)などに分けて報告する。
「海外の端末では,回路の電源ラインに配置するチョーク・コイルはせいぜい2~3個だが,FOMA 906iシリーズでは各端末で7~8個使われている」(906iシリーズの分解に立ち会った国内部品メーカーの技術者)——。
この技術者によれば,チョーク・コイルの数は「消費電力の大きな機能の数に比例する」。7~8個というコイルの数は,906iシリーズがいかに多機能かを如実に示しているという。
906iシリーズは,高速データ通信のHSDPAやGSMなどによる国際ローミング機能,ワンセグ放送の受信機能,FeliCa対応,GPS受信,高画素数のカメラ,高解像度のディスプレイなどの機能をほぼ全機種が共通に備える。加えて,機種によってはBluetoothや無線LANの機能を持つものもある。今回,技術者の協力を仰いで分解した結果,906iシリーズの内部設計で特に目を引いたのが,アンテナに対する取り組みであった。ワンセグやFeliCa,GPSなど906iシリーズに組み込まれた機能の多くは,携帯電話機能とは別の周波数帯を利用するアンテナを必要とする。小さな筐体内に用途や対応する周波数の異なるいくつものアンテナを収める手法は,各社の違いが大きかった。例えば,内蔵式のワンセグ・アンテナを採用する機種が登場したほか,FeliCaではアンテナ素子を封入する材料や形状に対して,各社各様の取り組みが見られた注1)。
注1) 海外でも,モバイル・テレビや,FeliCaと同様な近距離無線通信NFCなどへの取り組みが始まりそうだ。こうした状況に対して部品メーカーの技術者は「日本で培ったワンセグやFeliCaの技術を,ほぼそのまま生かせるだろう」とみている。
ワンセグ・アンテナは内蔵式に
ワンセグ・アンテナを内蔵式としたのは「FOMA P906i」と「FOMA N906iμ」の2機種である。共にシールド板を兼ねると思われる大きな金属板を筐体に組み込み,ワンセグ放送の受信アンテナとして使っている。
具体的には,P906iではディスプレイの背面,N906iμではディスプレイとキーボードの背面のほぼ全面にわたって金属板を配置していた。複数の技術者が,この金属板をアンテナ素子として活用していると推測する(図1)。波長と比べてある程度の大きさを持った導体であれば,アンテナとして十分に使えるからだ。ワンセグの地上デジタル放送の周波数帯は470M~770MHz帯であり,波長は390~640mm程度となる。端末サイズは100~200mm程度であり,アンテナとしては十分な大きさであるという。さらに,この金属板は,「大型化するディスプレイの発生する電磁雑音への対策も兼ねている」(前述の技術者)という。
図1 ワンセグ向けアンテナを内蔵 ワンセグ向けアンテナにおいて,パナソニック モバイルコミュニケーションズとNECは内蔵式のアンテナを採用している。1世代前の905iシリーズでは, すべてロッド式だった。ワンセグ用アンテナを使うためにP906iでは,主にメイン・ディスプレイの裏側部分をアンテナとして活用している。 (画像のクリックで拡大)
アンテナは重要なノウハウ
P906iは,ワンセグ向けアンテナの受信感度を向上させるために,二つのアンテナを使う合成ダイバーシチ技術も採り入れる。「FOMA P903iTV」から採用しているものだ。このため,上記の金属板によるアンテナに加えて,少なくとももう一つのアンテナが実装されているはずである。そこで複数の技術者にアンテナの配置を推測してもらったが,技術者によって分析結果が異なった。パナソニック モバイルコミュニケーションズ(PMC)は「内蔵アンテナの配置手法は重要なノウハウであり,明かせない」としており,差異化のポイントと言えそうだ。
P906iではアンテナに対する工夫に加え,筐体の機構についても,折り畳み式のディスプレイを縦方向だけでなく横方向にも開く機構とすることで,ワンセグ機能の付加価値を向上させている。ただし,「ディスプレイの背面をアンテナに使っているとするなら,ディスプレイを開く方向によってアンテナの向きが変わってしまうことになる。このため,開き方によって受信感度が異なる」(電機メーカーの技術者)現象が生じる可能性がある。
FeliCaアンテナは多種多様
一方,FeliCa向けアンテナでは,端末ごとに形状が大きく異なった。アンテナ素子となる金属を比較的大きなループ状とする必要があるため,筐体のデザインによってアンテナ形状が左右されやすいからという。
さらに,FeliCaに使う周波数帯が13.56MHzであることも,各社各様の取り組みが見られる理由となりそうだ。携帯電話機ではこの近辺の周波数帯を使う機能は少なく,「電波の干渉対策が,ワンセグなどと比べれば容易。通常は,電波干渉の起こりそうな機能を優先して配置する」(前出の技術者)ため,FeliCa向けアンテナは設計順序として後回しにされやすいという事情がある。
FeliCa向けアンテナは,アンテナを封入する材料と構造に着目すると,4種類に大別できる。金属ワイヤを,(1)フレキシブル基板に内蔵する方式(N906i,N906iL,N906iμ,F906i,SH906i),(2)ガラス・エポキシ基板に内蔵する方式(P906i),(3)そのまま筐体内に配置する方式(SH906iTV),(4)フレキシブル基板に内蔵し,スペーサを設置して立体構造とした方式(SO906i),である(図2)。
図2 工夫に富むFeliCa向けアンテナ FeliCa向けアンテナは,各端末で大きく異なる。アンテナとして比較的広い面積が必要であることなどから,形状が筐体のデザインなどに左右されやすいためだ。例えばN906iやF906iでは,高価だが薄 くできるフレキシブル基板を使う (a,b)。P906iでは,フレキシブル基板よりは厚くなるが,比較的安価なガラス・エポキシ樹脂にアンテナを封入した(c)。SH906iTVでは,金属ワイヤのみでアンテナを構成した(d)。SO906iでは,村田製作所製のアンテナを使った(e)。このアンテナは,細長い形状の両端に厚みを持ったアンテナ素子を設置することで,実装面積の削減を狙ったものである。 (画像のクリックで拡大)
厚みを作ってアンテナを小型化
(1)~(3)では,金属ワイヤをループ形状として平面上に設置することで電波を受信する。「FeliCa向けアンテナとしては一般的な手法」(前出の電機メーカーの技術者)である。(1)のようにフレキシブル基板を使うと,コストはやや高くなるが薄く実装できる。(2)のようにガラス・エポキシ基板を使えば,フレキシブル基板を使うよりは安価だが厚くなる。携帯機器の設計現場では「スペースの有無によって,フレキシブル基板とガラス・エポキシ基板を使い分けている」(同技術者)ことが多いという。(3)のそのまま筐体内に配置する場合は,安価だがワイヤ形状が変形しやすく,アンテナ特性が変化しやすい。
一方,複数の技術者が興味深い構造というのが,村田製作所製の(4)の長方形の両端に厚みを持たせた方式である。この方式の狙いは「実装面積の削減」(国内部品メーカーの技術者)とみられる。
金属ワイヤを使って何重巻きものループ形状を作るFeliCa向けアンテナでは,実装面積を小さくしようとするとワイヤ間の距離が小さくなり,浮遊容量などの影響でアンテナとしての特性が変化してしまう。このため,両端にスペーサとなる絶縁体か磁性体を挿入することで立体構造を作る。これにより,ワイヤ間の距離を大きくして浮遊容量を抑え,実装面積の小型化を図っているようだ。デメリットは,厚みが増えることに加え,スペーサの挿入がコスト高につながる可能性があることである。
FeliCaのアンテナの配置では,電池との重なりを防ぐことも重要になる。FeliCa向けアンテナと電池の配置が信号の送信部に対して重なる配置となると,電池の発生する雑音によって信号を受信できないケースがあるからだ。SH906iでは,電池とFeliCa向けアンテナの配置が重なるため,電池にNECトーキン製の電磁雑音抑制シート「バスタレイド」を装着することで電池雑音への対策をしている。「明らかにコスト高。なるべく避けたい設計」(国内部品メーカーの技術者)という声も聞かれた。
ワンセグは小型化と高機能化
ワンセグ用モジュールはシャープ,村田製作所,パナソニック エレクトロニックデバイス(PED)の3社の製品が使われていた。自社系列のモジュールを採用するシャープとPMCは,その優位性を生かして他社と差を付けたようだ注2)。
注2) ワンセグ・モジュールの価格は現在,700~800円程度という。2年前には2000円を超えていた。雑音対策などのために周辺回路を付加すると1000円程度になる。
シャープはモジュールを小型化した(図3)。同社の前モデル「FOMA SH905i」や「FOMA SO906i」が搭載したモジュールより面積で13%小さい品種を使っている。一方のPMCは外販品にはない機能を付加した。このモジュールは松下電器産業製の受信ICを2個搭載して,受信感度の向上を狙う。
図3 ワンセグ・チューナーは小型化と高性能化 SH906iやSH906iTVで,シャープが採用したワンセグ・チューナー・モジュールは,わずか半年前に905iシリーズで採用したモジュールから面積で約13%小型化した(a)。 P906iでは,実装面積は増大するが,ダイバーシチ受信で感度を向上するために松下電器産業製の受信ICを2個搭載した(b)。
また,モジュール周辺のフィルタ部品を見ることで,2社のモジュールの特徴も見えてきた。FOMAの800MHz帯はワンセグの470M~770MHzと干渉しやすい。このためFOMA向け端末では,ワンセグ向けアンテナの直後に特定の雑音周波数を除去するノッチ・フィルタを入れる。SH906iにおけるシャープ製のモジュール周辺ではノッチ・フィルタを形成する多数の受動部品が見られたが,PED製では見られない(図4)。つまり,シャープ製のモジュールではノッチ・フィルタを内蔵しないが,PED製では内蔵しているようだ。
図4 ノッチ・フィルタでワンセグの感度を向上 ワンセグでは雑音対策がカギを握る。3Gサービス(FOMA)で800MHz帯(830M~840MHz帯)を使うNTTドコモ向けの端末では,各社ともワンセグ向けアンテナの感度向上を狙ってノッチ・フィルタなどを実装している(a)。 こうした対策を取らないと,ワンセグ(470M~770MHz帯)と干渉するためである。SH906iやP906iでも同様の対策が見られた(b,c)。 (画像のクリックで拡大)スピーカーの配置に工夫あり
906iシリーズでは,主にワンセグの付加価値の向上のために,スピーカーの配置に工夫を凝らす端末もあった。ワンセグ視聴時に,ディスプレイを縦置きや横置きにする筐体構造を取る端末の場合,置き方によってユーザーに対するスピーカーの位置が変化してしまう。これを防いで常に左右にスピーカーがあるような構造として,音声品質の向上を狙う取り組みである。
SO906iでは,電磁誘導式のスピーカー3個を三角形の頂点となるように配置し,縦置きと横置きの両方の場合において左右にスピーカーがあるような構成とした。「スピーカーを3個も使うとは…。AVにこだわるソニーらしい設計」(部品メーカーの技術者)という声があった(図5)。
図5 ワンセグのために高品質なスピーカー ワンセグの付加価値を向上するため,スピーカーにコストを掛けて高品質な音声とする工夫が見られた。例えばSO906iでは,通常,2個のスピーカーのところ,3個のスピーカーを搭載していた(a)。3個を三角形の頂点として設置することで,ワンセグの表示画面が縦と横で変わった場合でも,ステレオ音声の品質を一定に保つことを狙う。同様の効果を狙う試みとして,SH906iTVは,10.3mm×14.1mmと大きなスピーカーを2個,対角上に設置している(b)。
SH906iTVでは,圧電式のスピーカー2個を,筐体の対角上に配置する。スピーカーの数は増やさずに,縦置きでも横置きでも,スピーカーが左右となる構成を取っている。「うまい配置」(前述の技術者)と,評価の声があった。
図1 メイン基板と電池を隣り合わせに配置する N906iμでは,メイン基板を小型化して2次電池を隣り合わせに配置した。基板と電池を重ねて配置する場合に比べて,筐体全体を薄くできる。 (画像のクリックで拡大) ここ数年,国内の携帯電話機では多機能化と薄型化の両立が,一つのトレンドになっている。FOMA 906iシリーズも,もちろん例外ではない。シリーズの中で今回最も薄いのは「FOMA N906iμ」である。厚さは12.9mmと,ほかの906iシリーズに比べて4mm以上薄い。前モデルのN905iμでは搭載していなかったワンセグ受信機能を備えつつ,N905iμと同じ厚さを維持した。そこで,N906iμを通じて薄型化への取り組みを紹介する。
まず,薄型化に大きく貢献している とみられるのが,「キーボード側のメイ ン基板を小型化し,Liイオン2次電池 と並べて配置したこと」と,ある携帯電話機技術者は指摘する(図1)。基板と電池を重ねて配置する他モデルと異なり,メイン基板はキーボード側筐体の半分ほど。面積が狭いので,基板両面にLSIや受動部品などを実装している。
図2 基板に埋め込む N906iμでは,2次電池の電極と接続するバネ部品の一部を基板に埋め込んでいる。基板上に実装するよりも基板の厚さ分だけ高さを減らせるものの,製造工数が増えるため,コストアップにつながりやすい。 (画像のクリックで拡大) このほか実装面での薄型化の取り組みとして,部品の一部を基板に埋め込む方法がある(図2)。同じ高さの部品を使っても,基板の厚さ分だけ基板上に実装するよりも低くできる。ただし,製造工数が増えるので,コストアップにつながりやすい。
図3 コネクタを使わない N906iμは,薄型化のために徹底的にコネクタを排除している。コネクタの代わりにACFを使い,ディスプレイ・モジュールなどと接続する。コネクタが不要といった利点はあるものの,新たに圧着装置が必要になってしまう。 (画像のクリックで拡大) メイン・ディスプレイ側の基板では,モジュールの接続などに異方性導電性フィルム(ACF)を多用した(図3)。ACFによる接続は,コネクタを不要にでき,コネクタを用いる場合に比べて接続に必要な高さが低い。ただし,組み立て時に圧着装置が必要,基板の両側から加熱・加圧するために接続面とその裏側にも部品を実装できない,コネクタのように抜き差しできない,といった制約が生じる。
N906iμは,906iシリーズで唯一,メイン・ディスプレイ側の基板とキーボード側のメイン基板をフレキシブル基板で接続している。ヒンジ部分を薄くするには,メイン・ディスプレイ側のメイン基板とキーパッド側のメイン基板をフレキシブル基板で接続するのが望ましいからだ。
ただし,サイクロイド型のような,ワンセグ視聴時にメイン・ディスプレイ部分を回転させる機構を備えた携帯電話機では,フレキシブル基板が断裂する恐れがある。906iシリーズは今回,N906iμを除く7機種が,回転機構を備えており,接続に細線同軸ケーブルを採用している。
図4 ケーブル通過部が直径約2mmと細い P906iでは,細線同軸ケーブルの通過部の直径が約2mmと細いヒンジ部品を採用し,筐体の薄型化を狙った。部品メーカーによると,通常の品種より高価であるという。 (画像のクリックで拡大) フレキシブル基板に比べると細線同軸ケーブルを採用した場合は筐体が厚くなりやすい。そこで「FOMA P906i」は細線同軸ケーブルと同時に,ケーブルの通過部の直径が約2mmと細いヒンジ部品を採用した(図4)。こうした細い品種は,携帯電話機で使われる一般的なものに比べて「価格が高い上,製造工数が増える」(ある部品メーカーの技術者)が,筐体の薄型化を優先したとみられる。P906iは,N906iμを除いた細線同軸ケーブルを使う全7機種のうちで最も薄い,厚さ17.4mmを実現している。
小型部品の採用や機能の集積化
薄型化だけでなく,多機能化に伴い,高級機種の実装面積はますます余裕がなくなってきている。そのため906iシリーズでは,実装面積削減の取り組みが随所に見られた。小型部品の採用や,一つの部品に複数の機能を盛り込む工夫などである。906iシリーズに共通するのが,0603サイズの受動部品が多いことである。「海外向けの携帯電話機では,まだ1005サイズの受動部品が多い」(部品メーカーの技術者)という。0603品は1005品に比べ価格がまだ高いからである。
906iシリーズでは,ベースバンド処理機能を備えたアプリケーション・プロセサの採用も目立つ。NECは,系列のNECエレクトロニクス製の「Medity」を採用した。NECとパナソニック モバイルコミュニケーションズを除く残りの3社は,ルネサス テクノロジの同様の機能を持つ「SH-Mobile G2」を採用している。
メイン・カメラ部では,実装面積の削減を図り,カメラ・モジュールの下部に画像処理用のDSPなどを配置しているようだ(図5)。このほか,電力供給用の外部端子とイヤホン端子を一体化した端子を採用し,端子数を減らして実装面積の削減を図っている。ただし,こうした端子を採用すると,従来の丸型や平型のイヤホンを使う場合には,ユーザーは変換アダプタを使わなくてはならない。
図5 カメラ・モジュール下部にDSPを配置 906iシリーズのような高級機種では,一つの部品になるべく複数の機能を盛り込んで,実装面積の削減を図っている。例えば,画像処理用DSPをカメラ・モジュール下部に配置して実装面積の削減を図る機種がある。写真はN906iの,有効画素数が約520万画素のカメラ・モジュール部品である。
グラファイト・シートを採用
薄型化と高密度実装を推し進めると,部品コストや実装コストが高くなるだけでなく,筐体内に熱がこもりやすくなってしまう。携帯電話機では,アプリケーション・プロセサやカメラ・モジュール,パワー・アンプなどが大きな熱を発するという。
薄型化に注力したN906iμでは熱拡散の効率向上を狙って,Cuに比べて5倍ほど熱伝導率が高いグラファイト・シートを筐体内部に張り付けている(図6)。放熱効果は高いものの,高価である。薄型機における熱対策の優先度の高さがうかがえる。
図6 グラファイト・シートを使い,効率よく熱拡散させる N906iμでは,熱伝導率が高いグラファイト・シートを使い,効率よく熱拡散させている。Cuなどに比べて熱伝導率が高いため高い放熱効果が期待できるものの,価格が非常に高い。
―― 次回へ続く ――
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