WIRELESS JAPAN 2008 - Super3Gと4Gに集中するドコモ
ワイヤレス関連の総合展示会「ワイヤレスジャパン 2008」が22日から東京ビッグサイトで開幕した。初日の講演には、NTTドコモ研究開発推進部の尾上誠蔵氏が登壇。最大通信速度が下りで1Gbpsにもなる4G(第4世代携帯電話)に向けたドコモの取り組みを解説した。
http://journal.mycom.co.jp/articles/2008/07/23/wj05/index.html
ドコモの尾上誠蔵氏
尾上氏は冒頭、ドコモの契約者数に占める3G(FOMA)利用者の割合に触れ、2001年10月のサービス開始以来、4,000万加入を突破し、「マイグレーション(移行)は計画通りに進んでいる」と話す。3Gサービスの開始で通信速度は向上したが、固定系のネットと比べると、5年遅れか一けた少ない数値にあるという。ただ、先の講演で総務省の渡辺克也電波政策課長が話したように、トラフィックが増えたからといって単純に通信速度を上げても、大容量コンテンツのサービスなどによってすぐに速度が足りなくなってしまう。
ドコモの契約数における3G端末の割合
固定系と移動系の通信速度の推移
このため、伝送効率を上げることを目指し、FOMAで使われるW-CDMAでは伝送効率を「3~4倍に高める技術」(尾上氏)であるHSDPA(High-Speed Downlink Packet Access)とを導入した。
HSDPAの仕様では、カテゴリーで通信速度が変わる。ドコモは当初カテゴリー6からサービスを開始し、現在はカテゴリー8のサービス(7.2Mbps)を提供している
W-CDMAの最初の通信速度384kbpsに比べるとHSDPAカテゴリー10では約14Mbpsと35倍程度にまで増速できる
こうした中、04年にドコモは「Super3G」構想を発表。4Gに向けた移行手順の中で「一番いいのがこのシナリオ」(同)だが、当初は3Gを発展させて、そこに4Gを追加していく、という「コンセプチュアルな話」だった。ドコモとしては、この4Gへのスムーズな移行というのがSuper3Gの最も大きな動機であり、3Gを今後発展させていくことを重視していたそうだ。
ドコモが04年に発表したSuper3Gのコンセプト
そのSuper3Gの位置づけとして規格化されたのがLTE
その後W-CDMA陣営の標準化団体「3GPP」で4Gの検討が始まり、3Gが4Gへとつながるというシナリオの重要性が業界でも認識されてきたのだという。「今年になってやっと、Super3Gのコンセプトの全体像が理解してもらった」(同)。
Super3G標準化の現状と今後の予定
Super3Gは、あくまで3Gの発展系であり、W-CDMAの技術仕様に追加されることになる。それがRelease 8と呼ばれる仕様で、これがLTE(Long Term Evolution)だ。検討自体は04年から始まり、現在は仕様の完成度を高めつつテストスペックを作っている段階だという。今年いっぱいはこの作業が続く見通しだ。
Super3G(LTE)では、ネットワークのアーキテクチャを簡略化し、OFDM、MIMOなどの技術を投入することで下り最大速度が100Mbps以上、上りが同50Mbps以上にもなる。通常は2本のアンテナを使って下り最大150Mbpsを、4本のアンテナを使えば300Mbpsが実現できるという触れ込みだ。
このSuper3Gのアーキテクチャを導入しておけば、エアインタフェースを変更するだけで4Gに対応できるというのが強みで、4Gであれば最大1Gbpsという高速データ通信が可能になる。
Super3Gの要件
Super3Gのアーキテクチャは3Gに比べてより簡便にしている。4Gの追加も容易
ドコモでは、Super3Gや4Gの導入は段階的に行うことを想定しており、Super3G端末は3Gもサポート。4G端末はSuper3Gと3Gをサポートし、エリア外では下位の通信方式を利用することで、短期間での全国展開を行わない方針。欧州では3Gと2GのGSMに両対応した下位互換のある端末が一般的で、「スムーズに導入するためには(3GとSuper3Gの)デュアル(端末)が自然」(同)。
現在、Super3Gの屋内・屋外の実験と平行して商用システムの開発を続けているドコモ。尾上氏は09年末までには商用システムの開発を終え、「10年以降は商用展開をやろうと思えばできるようにしたい」という考えを示す。
3GのころはPDCとの下位互換性がなかったが、Super3G以降は下位互換性を維持して展開していく
ただし、W-CDMAの時のように世界で先行しての商用化はしない意向だ。「3Gの時は早く(商用化を)やり過ぎて標準から外れたという批判」(同)はあったが、「それは全くないと宣言しておきたい」(同)。ドコモでは3GPP仕様に沿った形でサービスを開始する考えで、世界の動向を見つつ十分な試験を実施していき、海外との相互接続性を確保する。世界の業界で相互接続性を議論する「LSTI(LTE/SAE Trial Initiative)」でも、ドコモと同じ10年に商用化するというスケジュールを決めており、「(ドコモが)一人だけ突っ走っているわけではない」(同)。
ドコモによるSuper3Gの計画
LSTIのスケジュール
そんなドコモが行っているSuper3Gの試験では、屋内ではゲーム、ハイビジョン映像ストリーミング、双方向のリアルタイムハイビジョン映像のやりとりといったテストを実施。スループットは下りで240Mbps程度まで達成。12画面のHDビデオを同時に送るデモにも成功した。遅延も小さく、リアルタイムの格闘ゲームでも「ほぼストレスがない状況でゲームが楽しめる」(同)という。車両を使った走行試験でも、映像データを欠落なくハンドオーバーができた。
Super3Gの実験で使われたスペック
システム構成
実験での通信速度。画面は234Mbps程度だが、実験では240Mbpsに達した
HD映像12本の転送実験。1画面に4つのHD映像が配信されている。通信速度は200Mbps以上に達している
走行中の映像配信。画面では分かりにくいが途切れることなく映像が配信されている。通信速度は100Mbpsを超えている
Super3Gのハンドオーバーでは、データフォワーディングが使われる
実験は順調のようだが、「W-CDMA(陣営)の中で割れ始めている」(同)のが現状だという。LTE以外に既存のHSPAを拡張したHSPA+/HSPA++といったものまで出始めているということで、「無線技術の真価は、ある程度少ないステップでスペックアップするということ」(同)あり、HSPAを細かく拡張していくことには反対の立場を示したうえで「ドコモは4Gに集中する」(同)という。
今後の通信方式の位置づけ
細かい規格の乱立は「市場や産業に悪影響」と尾上氏
その4Gについては「Super3Gの発展」と尾上氏。すでに国際電気通信連合(ITU)の中で4Gが使う周波数帯が決められており、3GPPでもIMT-Advancedとして検討が開始されている。LTEをベースにした技術であり、仕様要件の一部は議論中だということだが、「要求条件はほぼ合意されている」(同)という。
IMT-Advanced標準化スケジュール
ちょっと細かいがIMT-Advancedの要求条件
すでにドコモではデータ転送速度5Gbpsの高速通信を実現したほか、低消費電力のLSIも試作しており、尾上氏は、今後も積極的に4Gの研究開発を進めていく意向を示した。
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