立ち位置鮮明! 3.9G、WiMAX、次世代PHS…次世代高速通信に向けたキャリアの取り組みは?
今後の携帯電話キャリア各社の動向を占う上で、重要となってくるのが次世代高速通信に対する戦略だ。次世代PHSやWiMAXのサービスインも近づき、さらにLTE、UWBといった3.9G、4Gに向けた取り組みにも注目が集まっているが、2007年7月22~24日に行われたワイヤレスジャパン内の講演では、各キャリアの高速通信に対する考え方や立ち位置の違いが鮮明に現れていたのが印象的であった。
http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/column/20080725/1017022/
W-CDMA陣営の3.9G戦略は「仲間割れ」?
昨年末に2.5GHz帯の周波数獲得合戦が完結したことで、現在最も注目を集めているのが、HSDPAやCDMA2000 1xEV-DO Rev.Aといった現行の3.5Gと呼ばれる通信方式の「次」となる、3.9Gに向けた動向だ。この3.9Gに関しては、W-CDMA陣営が擁立する「LTE」(Long Term Evolution)とCDMA2000陣営が擁立する「UWB」(Ultra Wide Band)、そしてHSDPAの拡張方式であるHSPA+が有力視されている。
その有力候補の1つである「LTE」を推進し、積極的に取り組んでいるのがNTTドコモだ。同社の執行役員である尾上誠蔵氏は、2010年のサービス開始に向け、3Gの標準化団体である3GPPでの標準化作業や、NTTドコモにおけるフィールドテストなどが順調に進んでいることをアピール。一方で、同じW-CDMA陣営の中でHSPA+が台頭してきていることについて、「1つの標準の中で分割が起きることは、市場や産業に大きく影響し、オペレーター(キャリア)にもよくない」と批判した。
一方、NTTドコモと同じW-CDMA陣営であるソフトバンクモバイルやイー・モバイルは「決定ではない」としながらも、HSPA+を採用する方針を見せた。LTEは新たな設備投資と周波数帯の取得が必要であるため、将来的にはLTEへ移行するものの、「2010年時点ではコストアップ要因につながってしまう」(ソフトバンクモバイル・松本氏)というのが大きな理由であるという。それゆえ、既存のW-CDMAの設備を生かす形で速度向上が望め、コスト削減につながるHSPA+を本命視しているようだ。
NTTドコモのLTE実証実験は屋内だけでなく屋外での実験も進んでいる。6つのハイビジョン映像受信時でも約80Mbpsのスループットを実現しているほかハンドオーバー時も通信速度に大きな影響は起こらないという(画像クリックで拡大)
NTTドコモはLTE以外の方式が乱立することを懸念する一方、イー・モバイルやソフトバンクモバイルは、既存の設備が生かせ、コストが抑えられるHSPA+(eHSPA)への移行を望んでいた(画像クリックで拡大)
採用方式に揺れたKDDIもLTEを採用か
一方、CDMA2000陣営であるKDDIは3.9Gに対してどのような姿勢で取り組もうとしているのだろうか? 同社はLTEとUWB、どちらを採用するかという方針を明確に発表せず、その動向に注目が集まっていた。なぜならLTEを採用すれば、将来的に国内での携帯電話通信方式がほぼ一本化されることとなり、同じ端末でのキャリア移行が行いやすくなるからだ。
KDDIの技術渉外室・課長補佐である小林修氏は、UWBとLTEについて「次世代通信方式に求められる条件や技術トレンドは共通している。両者のアーキテクチャに差はなく、同じ周波数帯域であれば速度は大きく変わらない」と話した。さらに両者とも、KDDIが採用しているCDMA2000のネットワークの併用が可能となっているため、どちらを選択しても問題ない状況であるという。
残念ながら会場ではどちらの方式を採用するか明言はされなかったが、同日に行われたKDDIの決算発表会で、同社代表取締役社長兼会長の小野寺正氏がLTEを選択する旨の発言を行ったと報じられている。だとすれば、短期的には色々な方式が混在するものの、将来的には国内の通信方式が一本化される可能性が大いに高まったといえる。
それと同時に、UWBを推すクアルコムがどのような行動を起こすかというのも気になるところだ。3Gの時も、KDDIは一時W-CDMAの導入に傾いていたが、クアルコムの抵抗があって最終的にCDMA2000の採用に落ち着いたという経緯がある。果たして3Gの時と同じような行動に出るのかどうか注目すべきだろう。
CDMA2000は、同じ陣営のUWBだけでなく、W-CDMA陣営のLTEとも併用が可能であり、どちらを選択しても問題はないという(画像クリックで拡大)
携帯キャリアとは違った戦略を打ち出す2.5GHz陣営
一方、既に2.5GHzの周波数帯を獲得し、BWA(広帯域無線アクセスシステム)のサービスインに向けて準備を進めているウィルコムとUQコミュニケーションズは、その準備状況を公開すると共に携帯電話キャリアとは異なる方針や姿勢を示していた。
今回の講演で多くの携帯電話キャリアが指摘していたのは、通信速度が高速化するのに伴い、その上でやりとりされるデータの量も増えていくということだ。それゆえ、「携帯電話網だけでなく無線LANや固定回線網へ負荷を分散させる必要がある」という訴えがしきりになされていた。
だがそれと全く逆の説明を行っていたのがウィルコムだ。同社の次世代事業推進室室長である上村治氏は、BWAが高速通信を際限なく使用することを前提とし、それを許容するシステムであると説明。次世代PHSサービスの「WILLCOM CORE」についても「じゃぶじゃぶ通信できるネットワークを目指したい」と話していた。これは同社がマイクロセルを採用しており、大容量通信に強いというシステム的な特徴が大きく影響しているといえよう。
また、2.5GHz帯の通信システムはMVNOが必須条件となっていることから、従来の携帯電話とは異なり水平性、オープン性を重視した戦略も大きな差別化ポイントとなっている。WiMAXによる無線ブロードバンドサービスの展開に向けて準備を行うUQコミュニケーションズ代表取締役社長の田中孝司氏は、「UQコミュニケーションズのロゴが付いた端末を出すのではなく、メーカーやMVNO先がデバイスを用意する形となる」と話し、オープン性をアピールしていた。
各陣営とも次世代に向けた取り組みは着々と進んでいるが、やはりその方針については大きな違いが見られるようだ。特に3.9Gはこれから必要な周波数帯の獲得競争が始まるということもあって、近く大きな動きが起こることが予想される。各陣営がどのような取り組みを見せていくのか、注目しておきたいところだ。
ウィルコムは、BWAの定義は「高速データ通信を際限なく使用すること」を前提としているとし、マイクロセルの強みを生かして「じゃぶじゃぶ通信できるネットワークを目指す」と説明した(画像クリックで拡大)
UQコミュニケーションズは、MVNOのパートナーとオープンなビジネスモデルを展開し、WiMAXで新しい価値を創出するとした(画像クリックで拡大)
著 者
佐野 正弘(さの まさひろ)
ゲームやWeb、携帯コンテンツなどのデジタル・コンテンツを開発するエンジニアを経て、現在ではモバイル・携帯電話に関する執筆を中心に活動している。近著に「ケータイでGoogle」(技術評論社)、「携帯サイトSEO&SEM向上テクニック」(毎日コミュニケーションズ)など。
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