エリクソンのNGN/IMS/LTE戦略を聞く
エリクソンは、モバイル事業を核に、モバイル通信のインフラを世界的に展開している世界企業です。また端末事業でも、ソニーとの合弁会社ソニーエリクソンが世界的に展開しています。欧州のNGNなどの標準化組織であるTISPANにも意欲的に参画し、次世代ネットワークNGNやIMSをはじめ、IPTVさらにモバイルでは3.5G以降に注目されるLTEなど、新しい分野でも積極的な取り組みを展開している国際的なリーディング・カンパニーです。
http://wbb.forum.impressrd.jp/feature/20080409/590
そこで、エリクソン北東アジアCTO 藤岡雅宣(ふじおか まさのぶ)氏に、モバイルの強みを生かしたNGN戦略、IMSによる固定系、移動系ネットワークを結ぶマルチメディア・プラットフォーム戦略、さらには次世代モバイル通信規格である、LTE/SAEやIMT-Advancedの標準化動向などをうかがいました。
第3回目は、
第1回 IPTVをコミュニケーションの核にするエリクソンの戦略
第2回 IMSによるFMCの実現とフェムトセルへの展開
に続き、WRC-07で決まった新しく決まったIMTの帯域や、次世代モバイル規格の世界的動向などについてお話しいただきました(文中敬称略)。
第3回 HSDPAからeHSPA、LTEへの戦略
≪1≫エリクソンの次世代モバイル戦略
■ 御社の3.5G以降の次世代モバイル戦略について、世界の状況も含めて、お話しいただけますか
藤岡 まず、HSPA(※1)の世界的な導入状況ですが、現在80カ国185商用ネットワークで通信速度3.6Mbps以上のHSDPAが入っています。そのうちの90のネットワークでエリクソンの無線アクセス・ネットワークが使われています。日本の場合は、すでにNTTドコモとソフトバンク、イー・モバイルがHSDPAを提供しています。
図1のネットワークの発展から見ますと、HSDPAの次に上りのビットレートを高速化した技術であるEnhanced Uplinkあるいは通称HSUPAが入ってきて、その次にHSPA Evolutionあるいは通称HSPA+、eHSPA(※2)が導入されてくるといわれています。
※1 HSPA(High Speed Packet Access):HSPAとは、W-CDMA方式を高度化し、下り回線のデータ転送レートを高速化した「HSDPA」と、同じく上り回線を高速化する「HSUPA」の総称
※2 HSPA Evolution (eHSPA)あるいはHSPA+:HSPA方式をベースに拡張した規格で、高位の符号化やMIMOの導入などによって下り最大40Mbps程度にまで高速化した無線技術
図1 モバイル通信技術の進化(藤岡氏資料による)(クリックで拡大)
藤岡 eHSPAの技術の場合は最大21/28Mbpsや40Mbpsになってきます。このように、ビットレートは2010年ぐらいまでにどんどん高速化していく方向です。これと並行して、NTTドコモがスーパー3Gとして最初に提案し、3GPPで標準化が進んでいるLTE(Long Term Evolution)では、帯域を20MHzまで使用して最大300Mbps程度までビットレートが出る方式も導入されていきます。
現在は、まだHSDPAが導入された段階であり、進化の途中です。当社としては、このモバイルの高ビットレート化をどんどん進めていこうということで、通信事業者にもいろいろ提案をしているところです。
■ 携帯電話の全世界の加入者の推移を見てみますと、今30億人を超えたところですね。
藤岡 そうですね。携帯電話の加入者の推移を見てみますと、全体では30億人を超えて、そのうちGSMは20億人ぐらいになっています。今後、W-CDMA、HSPAがどんどん増えていくと見ています。
現在、南米やオーストラリア、ニュージーランドなどの国々では、従来CDMA方式を導入していた事業者へもW-CDMAが普及し始めています。また、米国ベライゾンは、2007年11月、現在のCDMA2000方式から、今後LTEの方向に全面移行するという発表をし、大きな注目を集めています。
今後の携帯の世界のメインストリームは、GSMを軸としたW-CDMA、そしてOFDM方式による次世代のLTEへの流れだと思っています。
≪2≫WRC-07で決まったIMTの新しい帯域
■ 2007年10月~11月のWRC-07(世界無線通信会議2007)で、IMT(3Gおよび4G移動通信システム ※3)の帯域が決まりましたね。これについては、今後の影響なども含めて、どのようにお考えですか。
藤岡 図2にWRC-07で割り当てられた周波数マップの一部を示します。正直なところ、当初期待したほどの大幅な帯域は確保されませんでしたが、それでも新たに400MHz以上が確保されました。衛星や軍事関連、放送事業者との兼ね合いを考えると、大きな進歩だと思います。
具体的には、図2のオレンジ色の枠で示したように、
(1)3.4~3.6GHz(200MHz幅)
(2)2.3~2.4GHz(100MHz幅)
(3)698~806MHz(108MHz幅)
(4)450~470MHz(20MHz幅)
が今回IMT用に新たに割り当てられた周波数です。
当社としては、3.4~3.6GHzの200MHz幅などの帯域を認められたということは高く評価しています。今後、今回割り当てられた帯域をベースに、IMT-Advanced(4G)の標準化を進めていく1つの基盤ができたと見ています。
例えば700MHz~900MHzの辺りはUHF帯であり、アナログ・テレビなどを使っているところが多いと思うのですが、基本的にアナログ・テレビの跡地はモバイルで使うということが、推奨されていますから、そういう意味でもよかったと思っています。
※3 IMT:2007年10月に開催されたRA-07(2007年無線通信総会)では、第4世代移動通信システム(4G)をIMT-Advancedと呼ぶことが正式に決まるとともに、従来のIMT-2000(3G)とIMT-Advanced(4G)をまとめて「IMT」と総称することとなった。
図2 WRC-07でのIMT用周波数マップ(藤岡氏資料をもとに、IMT用新規割り当て周波数部分を色付け)(クリックで拡大)
※ オレンジ色の枠が新規割り当て周波数
■ IMTの帯域についてはわかったのですが、2010年あるいは12年あたりに、テークオフすると言われているIMT-Advanced(4G)向けの帯域はどうなるのでしょうか。IMT-Advancedは、以前、例えば静止の状態で1Gbps、移動で100Mbpsというガイドラインも発表されていましたが、そうすると100MHzぐらいのバンド幅が、それだけで必要になるのではないでしょうか。
藤岡 3.4GHzから3.6GHz(あるいは4.2GHz)の中から融通して使うというのは1つ考えられますね。IMT-Advancedは比較的狭い帯域から100MHz程度の帯域までを柔軟に使っていくことを意図しているので、その他の帯域にも適用される可能性は十分にあります。また、スペクトルが飛び地的に分散していてもこれらを一体化して使っていく可能性も検討することになっています。
>>「第4回 エリクソンのLTE製品開発ロードマップ」へつづく
プロフィール藤岡 雅宣(ふじおか まさのぶ)
現職:エリクソン 北東アジアCTO
1978年 大阪大学大学院電子工学 修士課程修了後、KDDに入社。研究所にて、ISDN、インテリジェント・ネットワーク、プロトコル等の研究。その後、交換部にて、新規サービス用システムの開発を担当。
1998年 日本エリクソンに入社。IMT-2000プロダクト・マネージメント部長、マーケットサポート・先端技術部長、事業開発本部長として新規事業の開拓、新技術分野を総括。
2005年2月 現職(チーフ・テクノロジー・オフィサー[CTO])。
工学博士。著書に『ワイヤレス・ブロードバンド教科書 高速IPワイヤレス編』(インプレスR&D刊、共編著)、『そこが知りたい最新技術 IMS入門』(インプレスR&D刊、共著)などがある。
スポンサードリンク
トラックバック
このエントリーのトラックバックURL:
http://stickman.xsrv.jp/mt3x214/mt-tb.cgi/670