総務省、端末メーカーなどへの「非公式ヒヤリング」結果を公表--第6回モバ研
総務省による「モバイルビジネス研究会」。
http://japan.cnet.com/news/com/story/0,2000056021,20348563,00.htm
4月26日に開催された第6回では、これまで研究会で行われてきた携帯キャリアや端末メーカー、MVNO 関係者などによる意見陳述を踏まえて、改めて研究会で議論されるべき主要な論点の案が総務省側から提示された。同時に、研究会構成員による海外事情についての調査結果も発表。さらに、総務省が端末メーカーなどに対して行った「非公式ヒヤリング」の結果も文書として報告された。
「非公式ヒヤリング」ではメーカーの本音も
非公開ヒアリングは、こうした研究会では「異例の措置」と言えるもの。この措置は、端末仕様の決定からマーケティング、販売までを携帯キャリアが主導しているという日本市場の特殊な状況の中で、端末メーカーが公式には言いにくい意見もあるのではないかとの思惑から、総務省が匿名で実施してきた。ヒヤリング内容の多くは、端末メーカーの公式見解(第3回モバ研記事を参照)をなぞったものだったが、「匿名」ならではのメーカーの「本音」も、いくつか含まれていた。
販売奨励金など現行ビジネスモデルのメリットとデメリットについての意見としては、「非常に高機能な端末が0円で売られている事実は、子どもたちにどのように映るのか。電機製品に対する相場観がなくなったり、ものづくりの価値が理解できなくなることが心配」、「過剰な低価格は端末開発・販売に関わる人のモチベーションを落とすのではないか」、「奨励金があろうとなかろうと、ワイヤレスブロードバンドの需要は間違いなく存在する」など、現行のビジネスモデルに対する懐疑論もいくつか見られた。
また、日本メーカーの海外シェア低下については「メーカー各社は海外から撤退してきた直後であり、体制を立て直している時期。世界的に通用するような状態になったら、もう一度海外に出て行く意志はある。そのための時間がほしい」との本音も明かされた。さらに、日本と海外の市場の違いとして「商品サイクルは、日本では4~6カ月しかないが、海外では短くても1年半はある。海外市場の方が格段にリスクは少ない」との指摘もあった。
さらに「プラットフォームの共通化により、ネックとなっている開発コストを下げて利益が出せるようになることが必要。キャリア間を含めたプラットフォーム共通化ができれば理想的」という意見も見られ、「キャリアごとの差別化」を主張する携帯キャリアとの温度差が垣間見える内容もあった。
諸外国でも一般的な「販売奨励金」
研究会の主要な課題である販売奨励金制度や欧米や韓国などの実態について、研究会構成員である野村総合研究所上級コンサルタントの北俊一氏による調査結果が報告された。
北氏は、現在日本で問題視されている販売奨励金について、欧米諸国ではむしろ活性化する傾向にあると指摘した。その背景には、日本と比較して格段に多い携帯電話のプリペイド契約が、徐々にポストペイ契約に移行しつつある状況があるという。さらには日本よりも遅れて3G(第3世代携帯電話)への移行が進みつつあり、それらの流れを加速させるために販売奨励金を適用するケースが増えていると報告した。
たとえば、韓国で以前は規制されていた販売奨励金について、1年後をめどに完全解禁される決定がされていたり、同じく奨励金が規制されていたフィンランドでも、3Gの普及をにらみ、規制が解除された事例などを紹介。「この2カ国を除く主要国では、販売奨励金に対する規制は存在しない」(北氏)。
また、英国では携帯電話はほとんどが無料で購入できる上、さらにはキャッシュバックや、iPodやPSP(プレイステーション・ポータブル)などのプレミアを付けて販売されるケースも少なくないと指摘した。「最新のミドルクラス端末でもほとんどタダで購入できると言っていい状況」(北氏)。
北氏によると、諸外国での販売奨励金は、その多くが1~2年間の契約期間を設定する「期間拘束型」だという。ユーザーが契約期間中に解約した場合は、契約の残存期間に応じて基本料金の全額を返金することを義務付けるという、日本のソフトバンクモバイルの割賦方式に似た方式だ。また英国では、日本のイー・モバイルのように、固定ブロードバンド網と契約をバンドルする料金プランも始まっているという。たとえばORANGEの携帯電話を契約したユーザーは、一定金額以上の料金プランに加入すれば、同社が提供する固定BBサービスにも無料で加入できるなど、「もはや携帯電話だけの戦いではなくなってきている」(北氏)。
またSIMロックについても、調査対象となったほとんどの国では実施されている。ただし、契約拘束期間が終了すればSIMロックを解除することは可能で、拘束期間中でも有料で可能など、日本に比べて柔軟な対応がされていると北氏は指摘した。
画像の説明 研究会座長を務める斉藤忠夫東京大学名誉教授(中央)と海外事例の報告を行った野村総研上級コンサルタントの北俊一氏(左)
「販売モデルは市場・競争環境に応じて変化すべき」
北氏はこれら諸外国の事例は、「むしろ日本型に近づいてきている」と総括した。
しかし同時に北氏は、こうした事例が日本市場に示唆するものは、決して日本の販売奨励金モデルの正当性を裏付けるものではないと強調した。「欧米は現在、2.5Gから3G、プリペイドからポストペイへの移行フェーズにあり、移行促進のために販売奨励金が積み増しされている。では、日本市場は一体いま、どのようなフェーズにあるのか」と北氏は、日本市場の現状認識に対して改めて問題提起した。
また、販売奨励金が上積みされることで端末を頻繁に買い換えるユーザーと、そうでないユーザーの間に料金負担の不公平が生じているという日本市場の問題点についても、「日本が世界で初めて直面した問題」(北氏)とし、むしろ欧米では今後顕在化してくる問題になるかもしれないと指摘。その上で「モバイル先進国日本のさらなる成長・新市場創造に資する、日本発のモデルを考える必要がある」として報告をしめくくった。
オープン型ビジネスモデルをモバイル競争政策の機軸に
諸外国の事例報告に次いで、今後の研究会で討議・決定すべき主要な論点についての「主要検討項目・1次案」が、総務省の総合通信基盤局電気通信事業部料金サービス課課長の谷脇康彦氏から説明された。
谷脇氏は、わが国のモバイルビジネスについて、「キャリア主導の垂直統合モデル間による競争が主流になっている」という現状認識を改めて示し、その上で日本市場の特徴として以下の7点、すなわち、(1)市場の成熟化(2)シェアの固定化(3)料金プランの複雑化(4)端末・サービスの一体化(5)ハイエンド端末中心の市場構造(6)モバイルコンテンツの潜在成長力(7)法人市場の潜在成長力──を挙げた。
その上で谷脇氏は、モバイル市場の急激な進化に伴い、競争促進措置として速やかに行うべきものを「第1フェーズ」、2011年(放送の完全デジタル化が実施され、通信がIPベースに移行すると見られる年)までに段階的に実施する措置を「第2フェーズ」と区別し、段階的に行っていくことを提案した。また競争促進措置の方向性としては、「垂直方向・水平方向の公正競争を確保し、各レイヤー間のオープン化を通じたオープン型モバイルビジネスの環境実現を、これからの競争政策の機軸にすえることが必要ではないか」と提起した。
そのために実施すべき各種の措置の1つとして、MVNOがMNOに対して情報開示の点で「情報劣位」にあるとの認識を示し、先に総務省が定めた「MVNO事業化ガイドライン」について、市場のモニタリング(監視)を続けていくとした。「固定網と同様に、設備を持っていない事業者でもモバイルで FMC的なサービスが実現できる環境ができれば望ましい」(谷脇氏)。
販売奨励金やポイントは経理上どう処理されているのか?
引き続き、谷脇氏の報告について研究会の構成員より質疑や提案が行われた。
研究会座長を務める東京大学名誉教授の斉藤忠夫氏は、MVNOへの適正な回線リセール(卸売)価格を判断する上で重要な原価計算に関わる、販売奨励金の経理上の区分けにについて谷脇氏に質問した。「通信費用の中に入っているのか、それとも別の項目に入っているのか。各社の会計上の具体的な処理を、研究会事務局で整理して報告してほしい」(斉藤氏)。また、携帯キャリア各社が実施しているポイントシステムについても言及。携帯キャリア各社のポイントによる囲い込み措置についても、経理上の処理について調査報告するよう事務局に要請した。
また、他の構成員からは、今後のモバイル市場を考慮すると、Wi-FiやWi-Maxについての議論ももっと必要との指摘がなされた。「欧州もオープン型モデルでやろうとしているが、日本ではどういうビジネスモデルでやろうとしているのか。もしWi-Fiまで垂直統合モデルで囲い込みがされてしまったら悲惨だ。とても変な国ができてしまう」(構成員)。
さらに他の構成員からは、「モバイルでも改めてユニバーサルサービスの定義を再構築すべき」という意見も出された。「もしかしたら、それは音声電話だけではないのかもしれない。ユニバーサルサービスとは何だろうという議論も必要だ」(構成員)。
この指摘に対して谷脇氏は、「FMCが進展していく中では、当然モバイル通信をユニバーサルサービスから除外して考えることはできない」とし、主要検討項目の中にユニバーサルサービス論も加えていくことを示唆した。
次のモバイルビジネス研究会は5月31日に開催予定。次回は、総務省から1次案が提出された主要検討項目について、研究会構成員の意見を踏まえた「2次案」が提示され、改めて議論される予定だ。
画像の説明 第6回モバイルビジネス研究会の全景
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